自然な表情を引き出す丨ポートレートの撮り方のテクニックと光のポイント

お子さんの成長を写真に残したいけれど、うまく撮れないと悩んでいませんか。ポートレート撮影の基礎知識があれば、自然な表情や瞬間を美しく残すことが可能です。この記事では、ポートレート撮影の基礎から実践的なテクニックまでを詳しく解説します。
記事を読めば、カメラの設定方法や光の使い方、構図のコツがわかり、子どもの成長を魅力的な写真で残せます。大切な思い出を美しく記録するための撮影テクニックを身に付けましょう。
ポートレートを撮る前に知っておきたい基礎知識

ポートレートを撮る前に知っておきたい基礎知識について以下2点を解説します。
- ポートレートとは人物を主な被写体とした写真
- スナップショットとの違い
ポートレートとは人物を主な被写体とした写真
ポートレート写真は、人物の魅力や個性を引き出す撮影技法です。一般的な記念写真と異なり、被写体の表情や雰囲気を重視します。背景をぼかして人物に注目を集め「その人らしさ」を表現するのが特徴です。プロのカメラマンからスマートフォンまで、幅広い機材で撮影が可能です。
背景との距離感や光の当て方を工夫すると、人物の魅力をより引き立てられます。子どもの自然な表情や瞬間を切り取るには、被写体との信頼関係も大切な要素です。明るい自然光や専用の照明を活用し、柔らかな雰囲気の写真に仕上げましょう。
スナップショットとの違い
ポートレートとスナップショットでは、撮影方法や準備に違いがあります。それぞれの違いは以下のとおりです。
撮影の準備 | ポートレート | スナップショット |
---|---|---|
計画性 | 撮影の構図や背景を事前に計画 | 瞬間的な出来事を自然に撮影 |
被写体の意識 | カメラを意識して表情やポーズを工夫 | 撮影されていることを意識せず自然な状態 |
光の扱い | 自然光や人工光を効果的に活用 | その場の光をそのまま活用 |
撮影時間 | 時間をかけて丁寧に撮影 | 一瞬のシャッターチャンス |
ポートレートはテーマに合わせて計画的に撮影するため、より印象的な写真に仕上がります。背景や光の調整も可能なので、子どもの成長記録に最適です。スナップショットは自然な一瞬を切り取り、子どもの表情や動きを生き生きと記録できます。
ポートレートを撮る際に必要な機材と選び方
ポートレートを撮る際に必要な機材と選び方を解説します。
カメラ
美しいポートレート写真には、適切なカメラ選びが重要です。用途や予算に応じて購入するカメラを選びましょう。主なカメラの種類は、以下のとおりです。
- 高級コンパクトデジタルカメラ(10万円前後)
- ミラーレス一眼カメラ(20万円前後)
- 一眼レフカメラ(20万円前後)
- スマートフォンのポートレートモード
初心者は、高級コンパクトデジタルカメラから始めましょう。レンズ交換の必要がなく、オートモードでも美しい写真が撮れます。レンタルカメラで機材を試してから購入を検討するのもおすすめです。慣れてきたらミラーレス一眼カメラや一眼レフカメラにステップアップし、本格的な撮影に挑戦してください。
レンズ
ポートレート撮影に適しているのは、焦点距離80〜135mmの単焦点レンズです。標準的な50mmレンズと比べて、被写体との自然な距離感を保ちながら背景をぼかせます。F値2.8以下の明るいレンズを選べば、室内でも美しいぼけ味のある写真の撮影が可能です。
子どもの撮影では、動きの予測が難しいため、広角から望遠まで対応できるズームレンズも便利です。70〜200mmのズームレンズなら、遊び場での自然な表情も逃さず撮影できます。初心者は手ブレ補正機能付きのレンズを選ぶと、安定した写真が撮れます。
ポートレートを撮る際の基本設定

ポートレート撮影に必要な基本設定で重要なポイントは、以下のとおりです。
- 撮影モードの選択
- ISO感度の調整
- F値の設定とぼけのコントロール
- シャッタースピードの選択
- ホワイトバランスの調整
撮影モードの選択
ポートレート撮影では、絞り優先モード(Avモード)を使用します。F値を低めに設定すれば、背景がぼけた印象的な写真が撮れます。カメラが自動でシャッタースピードを調整するため、子どもの動きにも対応しやすいのが特徴です。初心者はオートモードから始め、慣れてきたら絞り優先モードに挑戦しましょう。
マニュアルモードは、光の調整や特殊な表現に使用します。基本的な設定方法を理解してから、徐々に使いこなすのがおすすめです。
ISO感度の調整
ISO感度は、光の明るさを調整する設定です。数値が高いほど暗い場所での撮影が可能になりますが、ノイズ(ざらつき)が増える点に注意しましょう。ISO感度の設定例は以下のとおりです。
- 晴れた屋外:100〜400
- 曇り空の下:400〜800
- 室内:800〜1600
- 夕方以降:1600〜3200
ISO感度を上げすぎると、写真の画質が低下するため注意が必要です。できるだけ低いISO感度を維持し、必要に応じて三脚やフラッシュを使用してください。AUTO設定なら、カメラが自動的に最適な値を選んでくれます。
F値の設定とぼけのコントロール
F値は、背景のぼけ具合を調整する重要な設定です。F2.8〜F4.0の低い値に設定すると、背景が大きくぼけた印象的な写真が撮れます。顔全体にピントを合わせるならF4.0以上、目だけを際立たせるならF2.8以下が最適です。ぼけの効果は、被写体との距離によっても変化します。
カメラと被写体を近づけるほど背景がぼけやすいため、注意が必要です。被写体と背景の距離が離れているほど、より自然なぼけ味が得られます。望遠レンズを使用すれば、さらに効果的な背景ぼけが可能です。
シャッタースピードの選択
子どもの動きを鮮明に捉えるには、適切なシャッタースピードが重要です。手持ち撮影では1/250秒以上の速いスピードを選びましょう。シーン別のおすすめ設定は以下のとおりです。
- 静かに座っている場面:1/125秒
- 歩いている様子:1/250秒以上
- 走り回る場面:1/500秒
- 公園の遊具:1/1000秒
- 室内:1/60秒以上
シャッタースピードが遅すぎると、手ブレや被写体ブレの原因になります。暗い場所では三脚を使用し、1/60秒以上のスピードを保ちましょう。シャッタースピードは、光の量にも影響します。明るい場所では速いスピードでも十分な光量が得られますが、暗い場所では露出不足になりやすいため注意が必要です。
ホワイトバランスの調整
ホワイトバランスは、写真の色合いを決める重要な設定です。太陽光や蛍光灯など、光源によって色味が変化するため、適切に調整しましょう。オートホワイトバランスは、自然な色合いを自動で調整してくれます。意図的に色味を調整すれば、写真の印象を大きく変えられます。
屋外の撮影では「太陽光」モードを選択し、肌色を自然に表現しましょう。室内では「蛍光灯」や「電球」モードに切り替え、光源による色かぶりを防いでください。朝夕のゴールデンアワーは「曇天」モードを使用すると、柔らかな光を生かした暖かみのある写真に仕上がります。
【シーン別】ポートレートの撮り方
ポートレートの撮影方法について、以下のシーン別に解説します。
- 屋内
- 自然の中
- 都会の街中
屋内
屋内の撮影では、光の調整が重要なポイントです。窓際で撮影すれば、自然光を活用した柔らかな写真が撮れます。カーテンやブラインドで光の強さを調整し、被写体の表情を引き立てましょう。窓から1〜2メートル離れた位置なら、柔らかな陰影が生まれます。室内照明は補助光として活用ましょう。
天井の照明だけでは上からの強い光になりやすいため、スタンドライトなどで横からの光を加えてください。壁や家具を背景に利用すれば、シンプルで洗練された写真に仕上がります。観葉植物や小物を配置すれば、より豊かな表現が可能です。反射板を使えば暗部を明るく補正でき、バランスの良い写真が撮れます。
自然の中
自然光を活用した撮影ポイントは、以下のとおりです。
- 木漏れ日を活用した柔らかな表現をする
- 季節の花や緑を背景に取り入れる
- 早朝や夕方の優しい光を選ぶ
- 水辺の反射光を利用する
- 空や雲を背景に入れる
自然の中での撮影は、光の変化や風景を活かした印象的な写真が撮れます。木漏れ日は午前10時〜午後2時頃が最適です。木の枝の間から差し込む光が美しい陰影を作ります。早朝や夕方のゴールデンアワーは、柔らかな光で肌を美しく見せられます。被写体の動きや表情を捉えて、生き生きとした瞬間を切り取りましょう。
都会の街中

都会ならではの要素を活用すると、独特の雰囲気を演出できます。高層ビルや街灯を背景に使えば、都市的な印象の写真に仕上がります。夜景や街灯の光を利用すると、幻想的な演出が可能です。反射するガラス面やミラーを使うと、被写体と街の景色が重なり合う不思議な写真が撮れます。
人通りの多い場所では、動きのある背景を活かした撮影も魅力的です。歩道橋や地下道、カラフルな広告など、都市ならではの要素を取り入れると、印象に残る写真になります。電車や車のライトを光の軌跡として撮影すれば、ダイナミックな表現も可能です。
ポートレートを撮る際のテクニック
魅力的なポートレート写真を撮影するためのテクニックは、以下のとおりです。
- 順光・逆光・サイド光を使い分ける
- 構図を活用する
- 背景を活かす
順光・逆光・サイド光を使い分ける
光の当て方によって、写真の印象は大きく変化します。順光は、被写体の正面から光が当てる方法です。自然な表情を捉えやすくなります。逆光は、被写体の後ろから光が当てる方法です。輪郭を強調した印象的な写真が撮れます。サイド光は被写体の横から光を当てる方法で、立体感のある写真に仕上がります。
初心者は順光から始めましょう。顔の細部まではっきりと写り、失敗が減ります。慣れてきたら逆光やサイド光にも挑戦してください。逆光は露出の調整が難しいため、露出補正機能を活用します。サイド光は影の濃さを調整し、適度な陰影を作るのがポイントです。
時間帯や天候によって光の質は変化するため、撮影のタイミングも意識しましょう。
構図を活用する
印象的な写真を撮るのに効果的な構図は、以下のとおりです。
- 三分割法で被写体を配置する
- シンメトリーで安定感を出す
- フレーミングで視線を誘導する
- 対角線上に被写体を置く
- 前景を活用して奥行きを作る
三分割法は、最も基本的な構図です。画面を縦横3等分し、交点に被写体を配置すれば、バランスの良い写真が撮れます。シンメトリー構図は左右対称に被写体を配置し、安定感のある写真を作るのが特徴です。フレーミングは窓枠や木の枝など、自然な枠を作って被写体を囲むように撮影します。
対角線構図は、動きや躍動感を表現したいときに効果的です。前景を活用すると写真に奥行きが生まれ、より立体的な表現が実現します。
背景を活かす

背景は、写真の印象を決める重要な要素です。季節感のある背景を選べば、思い出を鮮明に残せます。春は桜や新緑、夏は青空や海、秋は紅葉、冬は雪景色など、四季折々の風景を取り入れましょう。都市部では高層ビルや街灯、カラフルな看板なども魅力的な背景です。
背景の色や形を活用して雰囲気を演出すれば、より魅力的な写真に仕上がります。暗い背景には明るい服装、明るい背景には暗い服装の被写体を配置すると、コントラストが効いた写真の撮影が可能です。幾何学的な形の背景を選べば、モダンな雰囲気を演出できます。
ポートレートを撮る際によくある悩みと対処法

ポートレート撮影でよく直面する課題は以下のとおりです。
- ピントが合わない
- 被写体が浮かない
- 光の使い方が難しい
ピントが合わない
ピントが合わない原因は、オートフォーカスの不具合や被写体の動き、ピント合わせの位置の誤りなどにあります。子どもの場合、動きが速く予測が難しいため、ピント合わせに苦労します。瞳AFモードは、自動で目にピントを合わせてくれるので便利な機能です。
撮影モードをAFサーボに設定すれば、動く被写体を追従してピントを合わせ続けます。シャッタースピードを1/250秒以上に設定し、手ブレやピンボケを防ぎましょう。明るい場所での撮影を心がけ、十分な光量を確保するのも重要です。
被写体が浮かない

被写体が背景から浮いて見えない場合の対処法は、以下のとおりです。
- 背景との距離を2メートル以上空ける
- F値を2.8以下に設定する
- 被写体に適切な光を当てる
- 服装と背景の色を対比させる
- レフ板で明るさを調整する
背景と被写体の距離を離すと、自然な立体感が生まれます。F値を低く設定すれば、背景がぼけて被写体が浮き立ちます。被写体に適切な光を当てれば、陰影が生まれ立体感の演出が可能です。服装と背景の色の組み合わせを工夫し、コントラストをつけるのも効果的です。
レフ板で暗部を明るく補正すれば、より自然な立体感が得られます。
光の使い方が難しい
光の使い方は、ポートレート撮影の中で最も難しい要素の一つです。自然光は柔らかく自然な印象を与えますが、時間帯や天候によって大きく変化します。人工光はコントロールしやすいものの、不自然な陰影が生まれやすいのが欠点です。光の質や方向、強さを理解し、状況に応じて使い分けましょう。
朝夕のゴールデンアワーは柔らかな光が得られ、美しい写真が撮れます。昼間の強い日差しは、日陰やレフ板を活用して調整が可能です。室内では、窓際の自然光を基本としてください。補助光として人工光を加えると、バランスの良い光を作り出せます。逆光時は露出補正を使用し、適切な明るさを保ちましょう。
まとめ
ポートレート撮影は、人物の魅力を引き出す奥深い写真技法です。カメラとレンズの選び方や基本設定、光の使い方、構図のコツなどを理解すれば、魅力的な写真が撮れます。初心者は簡単な設定から始め、徐々にテクニックを増やしましょう。
子どもの成長を記録する際は、自然な表情やしぐさを大切にしてください。子どもならではの魅力を引き出せば、思い出に残る1枚が撮れます。

伊とう
写真が好きなWebエンジニア|2児の父|モノクロ写真好き|シンプルなもの好き|α7IV、α7cⅡ、GRⅢ